夜話について


申込時に話を聞きたい先生の希望を出していただきます.当日,希望に基づいて振り分けられた講師のところで,各研究について,完全に理解できるまでとことんホワイトボードを横に,研究について熱りましょう.

夜話の題材となる各先生の代表研究は以下のとおりです.論文は申込み後にこちらよりメールで送付いたします.事前にご一読いただければと思います.また,事前に質問がある場合は,各先生に個別にメールください.対応させていただきます.


岸本直子先生

連絡先:kishimotoあっとまーくmec.setsunan.ac.jp(あっとまーくは@に変更のこと)

 

略歴:2004年 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程後,宇宙航空研究開発機構 招聘開発員,JSTさきがけ研究員を経て,2014年より 摂南大学理工学部機械工学科 准教授.

 

代表的な研究開発論文:

1. Evaluation of On-orbit Data inside the Inflatable Space Terrarium on the International Space Station, Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan, Vol. 14, No. ists30, pp. Pc_1-Pc_6, 2016

内圧で構造を構築するインフレータブル構造において,作動流体を空気,内圧を地上1気圧とすることで,内部に植物などが栽培できる空間の構築を目指して, 国際宇宙ステーション曝露部第二期実験「SIMPLE」で,インフレータブルスペーステラリウムを開発,軌道上実験を実施した.残念ながら,展開には成功したものの,残念ながら内圧を維持することはできなかったが,2年間にわたって温度と内圧のデータ,内部の画像を取得することができた.

 

2.Surface Shape Measuring Method for Space Structures Based on Images in Ultra-Violet Range, Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan, Vol. 16, No.6, pp. 543-549, 2018

軌道上で大型構造物の面形状を高速かつ高精度に計測する手法として,格子投影法の研究開発に取り組んでいるが,熱光学特性に影響を与えずに構造物表面にパターンを付与する方法として,紫外線領域を利用する方法を提案した.

 

3.マイクロCTで取得した3次元形状情報に基づく有孔虫骨格モデルのパラメータ同定,化石,99,pp.53-61,2016

微小重力環境下での最適構造物の形態や特徴を探索する目的で,化石として岩石に残り,現生も存在する有殻原生生物骨格の形態をマイクロX線CTで取得し,その骨格の幾何学的・力学的特性を分析する研究を続けている.


田中宏明先生

連絡先:tanakahあっとまーくnda.ac.jp(あっとまーくは@に変更のこと)

 

略歴:1998年 東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学修士課程後,三菱電機株式会社,東京大学大学院 博士課程,シーエスピージャパン/JAXAを経て,2017年より 防衛大学校 航空宇宙工学科 教授.

 

代表的な研究開発論文:

1. H. Tanaka, M. C. Natori, Shape Control of Cable-Network Structures Based on Concept of Self-Equilibrated Stresses, JSME International Journal C, Vol.49, No.4, pp.1067-1072(2006.12)

衛星搭載用大型展開アンテナ構造で広く利用されているケーブルネットワーク型構造物に対して,自己釣合応力の考え方を用いた形状制御手法を提案し,その手法の有効性を検証した。本手法では,張力密度法(force density method)を用いて初期形状と制御目的形状での自己釣合応力を算出し,それらとケーブルの構成則より制御入力を算出する。これにより,反復計算なしに制御入力を直接求めることができる。

 

2. H. Tanaka, N. Shimozono, M. C. Natori, A Design Method for Cable Network Structures Considering the Flexibility of Supporting Structures, Transaction of the Japan Society for Aeronautical and Space Science, Vol.50, No.170, pp.267-273(2008.2)

支持構造の剛性を考慮に入れたケーブルネットワーク構造の設計方法を提案し,その有効性を検証した。この方法では,まず目的形状となるケーブルネットワークの張力状態を張力密度法により設計し,支持構造の変形を考慮した場合の張力密度の修正量を算出し,支持構造が変形した状態で各節点が目的の位置となるようなケーブルネットワーク構造の設計を行なう。本設計手法を用いることで,柔軟な支持構造で広げられたケーブルネットワーク構造を繰り返し演算なしに設計できることを明らかにした。


佐藤泰貴先生

連絡先:satoh.yasutaka2あっとまーくjaxa.jp(あっとまーくは@に変更のこと)

 

略歴:2012年 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 博士課程後,日本学術振興会 特別研究員 PD,宇宙航空研究開発機構 招聘研究員,三菱電機株式会社を経て,2017年より 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 助教.

 

代表的な研究開発論文:

1. Mechanical Properties of Z-Fold Membrane under Elasto-Plastic Deformation, JSME Technical Journal, Journal of Space Engineering, Vol.4, No.1, 2011, pp.14-26.

膜面をジグザグに折った場合の折り目の弾塑性変形特性を明らかにした.折り目を形成させるための力とそれによって潰れる折り目の厚さの関係に着目し,大変形を考慮した理論解析および有限要素解析による予測法の検討と,実験検証を行った.

 

2. 大型膜巻きつけ折り畳み過程で形成される折り目線の形状特性, 日本航空宇宙学会論文集, Vol.61, No.4, 2013, pp.95-102.

大型膜を巻きつける際に折り目線がずれる現象に対する力学的な考察と,ずれないようにするための折り畳み方法の提案を行った.ソーラーセイル等の宇宙用大型膜の収納方法の一つとして,ジグザグに折り畳まれた後で巻き付けられる方法が用いられる.この際に生じる折り目線のずれの量を,既往の幾何学的な考察に張力などの力学的なパラメータを取り入れ,予測法を構築するとともに,実験的に検証した.

 

3. 金属3Dプリンタにより造形した月惑星探査機用着陸衝撃吸収材の力学特性, 日本航空宇宙学会論文集, (Accepted)

3D積層造形した切頂八面体による衝撃吸収材の荷重-変位特性の予測手法を提案した.切頂八面体を不安定トラスととらえ,形態解析によって変形モードを洗い出すとともに,各モードの崩壊荷重を塑性ヒンジモデルにより求めた.その結果,提案手法と実験の荷重-変位曲線がおおむね一致することを明らかにした.

 


有田祥子先生

連絡先:arita.shokoあっとまーくshizuoka.ac.jp(あっとまーくは@に変更のこと)

 

HP:http://arita.xn--shokoshizuoka-tz3ljg7l1c9ty3f.ac.jp/

 

略歴:2016年 日本大学大学院理工学研究科 博士課程 航空宇宙工学専攻 修了,在学中より小型衛星SPROUTの開発や,  ㈱アクセルスペースにて小型衛星の開発に従事し,2017年より,静岡大学 工学部機械工学科 宇宙・環境コース 助教

 

代表的な研究開発論文:

1. A study of dynamic evaluation of structural buckling, Mechanical Engineering Letters, Vol 2, No.15-00677, 2017.

大規模構造解析での高効率な座屈特性調査を念頭に置き,トラス要素でのFEM動解析におけるスナップスルー座屈の検出・定量化方法を提案した.剛性マトリクスの非正の固有値を持つモードに対して,剛体運動と座屈を区別することで,座屈の正確な検出および構造不安定性の定量化を実現した.

 

2. Numerical model for prediction of wrinkling behavior on a thin-membrane structure, Mechanical Engineering Journal, Vol.1, No.4, SE0041, 2014.

引張と圧縮で剛性の異なる柔軟構造物のより正確な構造解析を目的とし,FEMの膜要素における,エラスティカを用いた圧縮剛性の決定方法を提案した.圧縮で容易に座屈し,しわ・たるみを発生する膜面に対して,圧縮剛性を理論に基づいて決定することができ,しわ・たるみ領域をより正確に表現できる.

 

3. A Proposal of New Deployable Space Structure Applying Buckling, AIAA SciTech Forum,  449-SD-16, 2018.

円筒螺旋折紙に基づく双安定な立方体展開構造物を提案,開発している.高比剛性な新しい宇宙構造物として,膜面デバイスの足場や大型構造物の支持部材となるような構造を目指し,設計や変形の計測等を行っている.


石村康生

絡先:ishimuraあっとまーくwaseda.jp   (あっとまーくは@に変更のこと)

 

略歴:2001年 東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学博士課程修了後,北海道大学 複雑系工学専攻 助教,JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系(東京大学大学院 工学系研究科 兼任)を経て,2018より 早稲田大学 創造理工学部 教授

 

代表的な研究開発:

1. X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)高精度構造システムの開発報告,日本航空宇宙学会誌,65巻(2017)1号. 

X線天文衛星「ひとみ」は,軌道上で全長14 mという国産科学衛星としては最大規模の大きさであり,その上に軟X線分光検出器,軟X線撮像検出器,硬X線撮像検出器,軟ガンマ線検出器の4種類の合計6台の観測機器が搭載されていた.構造としては,これらの機器を軌道上で同じ天体を同時に高精度に指向させる必要があった.本稿では,この高精度かつ大型なASTRO-Hの構造システムの開発および検証結果を精度と強度の観点から紹介している.

 

2.Fundamental performance of a smart structural system utilizing thermal expansion for pointing, Journal of Intelligent Material Systems and Structures,Vol.30, 2019, pp.1397-1408.

構造物の高精度なポインティング制御システムの研究である.人工的な熱膨張をアクチュエータとすることで,高い信頼性を実現し,機構部に弾性ヒンジを用いることでガタを排除し,高精度を実現した.設計のガイドラインをまとめると同時に,本システムの有効性を検証するために4m規模の伸展トラスに適用し,ヒステリシス,応答性,追従特性を評価した.トータルシステムとして,2秒角の精度での制御が可能であることを確かめた.

 

3.Novel Technique for Spacecraft's Thermal Deformation Test Based on Transient Phenomena, Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan, Vol.12(ists29) Pc.29-Pc.34, 2014.

大型宇宙構造物の高精度な熱変形試験技術の研究である.従来は,室温状態と構造体を昇温した後の平衡状態における形状の差分から変形量を導出し,解析結果との比較を行っていた.しかしながら,平衡状態までの待ち時間が長く,その間に生じる構造体および計測装置を固定しているジグの変形や建物自体の変形が無視できないという問題があった.そこで,構造体に加える熱を周期的に変動させ,計測された変位の中でその周波数成分のみを取り出すことを考えた.これにより,ジグの変形などの外乱に対してロバストな熱変形試験が実施できる.